日本の都市鉱山は、世界有数。だが金の回収率は、1割に満たない。足りないのは製錬技術ではなく、集める仕組みだ。
資源のない国、と日本は呼ばれてきた。だが「都市鉱山」という尺度で見ると、話は逆になる。国内に眠る金は約 6,800 t、世界の現有埋蔵量の 16%。銀は 60,000 t、22%。地下にではない。製品の中に、薄く広く埋まっている。
製錬技術も、世界の最前線にある。問題は、その鉱床を掘り当てる技術ではない。「掘る」のではなく「集める」という、まったく別の問題だ。
都市鉱山の特異性は、品位の高さにある。天然の金鉱石は、1 t 掘っても金は約 5 g。一方、使用済み携帯電話 1 t、およそ 1 万台からは、約 280 g の金が採れる。50 倍以上だ。
レアメタルも同じ構図にある。インジウム、タンタル、スズ。日本の都市鉱山には、世界埋蔵量の 1 割を超える金属が、いくつも積み上がっている。地下資源で測れば「資源小国」、地上資源で測れば「資源大国」。それが、この国の実像だ。
鉱床は、すでにそこにある。問題は、その先だ。
これだけの鉱床がありながら、実際にリサイクルされている金は、1 割にも満たない。日本では年間およそ 65 万 t の小型家電が廃棄され、その中には数百億円分の貴金属が含まれている。だが大半は、引き出しの奥で退蔵されるか、国外へ流れていく。
理由は、製錬所の能力不足ではない。鉱床が、製錬所に届かないからだ。地下鉱山と都市鉱山は、同じ「鉱山」でも、律速しているものがまるで違う。
製錬の世界では、処理能力の増設が進む。電子機器の廃基板 ─ E-Scrap ─ は、世界で年間およそ 80 万 t 発生する。都市鉱山の本丸だ。受け入れ能力を 1.5 倍に広げる計画も動いている。
だが、能力を広げても、集荷量がついてこなければ、稼働率が落ちるだけだ。製錬能力は、資本と技術で増やせる。数年で解ける問題だ。集荷量は、そうはいかない。分散した排出点、退蔵、海外流出、運搬コスト。どれも冶金では解けない。
処理能力は、資本で増える。集荷量は、構造を解かないと増えない。
pool は、資源循環のデータインフラ。排出と回収と調達を、ひとつのデータ基盤に束ねる。排出点から製錬所までの「集める」レグを、可視化し、最適化し、追跡可能にする。
処理は、すでにある。世界水準の製錬技術が、この国にはある。足りないのは、その口元まで量を届ける上流の層だ。どこに、何が、どれだけ眠り、どう運べば最も安く確実に届くか。それを記録し、設計する仕事。
これは、構想ではない。横浜市の 1,200 拠点で、もう動いている。
都市鉱山は、すでにそこにある。製錬技術も、ある。足りないのは、鉱床と製錬所をつなぐ「集め方」の設計だけだ。
それは、掘る技術の話ではない。集める仕組みの話であり、つまりはデータの話だ。