GHG プロトコルの、次。
WBCSD が主導する Global Circularity Protocol。GHG プロトコルが炭素を企業の言葉に変えたように、GCP は循環を世界の言葉に変える。── そのとき、何が変わるのか。
循環経済を測る、世界共通の物差しがない。資源の流れを「どれだけ循環させているか」を、企業同士で比べる方法が、まだ世界に存在しない。
この欠落を埋めるために、WBCSD が動き出した。GHG プロトコルが炭素を世界の言葉に変えたように、循環を世界の言葉に変える試み ── Global Circularity Protocol。この記事は、その意味を読み解く。
循環の、世界共通基準が生まれる。
WBCSD(世界経済人会議 for Sustainable Development)が、世界の主要企業と進めているプロジェクトがある。Global Circularity Protocol ── GCP。循環経済を測るための、世界共通の枠組みだ。
参画企業の顔ぶれが、その射程の広さを物語る。Apple、Schneider Electric、IBM、Bayer、Mars、SAP、Pfizer。業界も地理もまたぐ。枠組みづくりを技術面で支えるのは、KPMG とアカデミアの研究者。
狙いは明確だ。「循環」の世界共通指標を作ること。気候に GHG プロトコルがあるように、循環経済にも、共通の物差しが要る ── それが GCP のスタート地点だ。
測れないものは、減らせない。
ESG の開示フレームワークは、いま膨大に存在する。GRI、SASB、TCFD、SBTi、CDP、ISSB、CSRD、SSBJ。それぞれが、それぞれの言葉で「循環」を語っている。
企業 A が「循環率 80%」と発表しても、企業 B の「循環率 85%」と比べられない。算定範囲も、計算式も、対象品目も違うからだ。投資家にとっては、データが揃わない。規制当局にとっては、基準を作れない。企業同士は、ベンチマークができない。
GHG プロトコルが歩んだ、四半世紀。
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1998
WRI と WBCSD が GHG Protocol を共同立ち上げ。世界共通の炭素算定基準づくりが始まる。
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2001
Corporate Accounting and Reporting Standard を発表。Fortune 500 の標準計算式が確立。
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2011
Scope 3 ガイダンス追加。サプライチェーン全体の炭素排出を測る方法論が出る。
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2015
パリ協定で世界の気候政策の前提に。各国 NDC、SBTi、CDP の計算根拠として参照される。
これが、GHG プロトコルが歩んだ約四半世紀の地図だ。最初の 3 年で標準を作り、10 年で計測範囲を広げ、20 年弱で国家政策の言葉になった。GCP は、同じ軌跡を辿る可能性が高い。標準化 → 開示制度の前提 → 投資家の判断基準 → 国家政策の言語 ── いまは、その軌跡の始点に立っている。
標準を作るのは WBCSD だが、それを満たすデータは、現場にしかない。
なぜ、これが RECOTECH の話なのか。
GCP の枠組みを作るのは WBCSD だ。だがその枠組みを満たすデータは、WBCSD の中にはない。データは、企業の現場にしかない。
排出した品目は、何か。どこから出たのか。どれだけの重量か。何にリサイクルされたのか。再生材として、誰のもとへ届いたのか。── これらを、品目 × 拠点 × 時刻 の粒度で持っている企業は、ほとんど存在しない。多くの組織が現場で集めているのは、「契約上、何 t 引き渡したか」という処理委託の総量にとどまる。
RECOTECH が pool で取り組んできたのは、まさにそこ。現場の業務改善のためのデータ基盤が、結果として国際標準の開示にも使える状態を、先に作っておく。マニフェスト電子化、テナント按分、コスト最適化 ── これらの実務メリットを、いまの現場に届ける。その同じデータが、数年後の GCP に応答するときの基礎になる。
GCP が共通言語として動き始める日 ── 早ければ数年内、遅くともこの 10 年のうち ── pool でデータを持っている企業は、その日から開示できる。準備期間ゼロで、世界の言葉に参加できる。逆に、いま品目別の記録を取っていない企業は、その日から数年かかって、現場のデータ収集を始めることになる。
言語が、揃う日。
GHG プロトコルが炭素を世界の言葉に変えたように、GCP は循環を世界の言葉に変える。「循環」はこれからの数年で、定性的な志から、定量的な経営指標に変わっていく。比較され、評価され、投資判断の材料になる。
標準を作るのは WBCSD だ。だが、その標準を満たせるかどうかは、現場のデータ次第だ。標準を待ってから動き始めても、間に合わない。標準が来た日に、すでにデータが揃っているか。そこで、企業の景色は分かれる。